ちょっと黙って心臓
「チョコチップメロンパンとクリーム入りメロンパン、どっちがいい?」

「……チョコチップメロンパン」

「じゃあ、はい」



そう言って渡されたメロンパンのパッケージを、屋上の床にぺたりと座りながら開ける。

目の前には同じように床に座り込んで、のんびりとブリックのカフェオレを飲んでいる男(名前は夏川というらしい)がいる。

……私の人生最後の食事は、チョコチップメロンパンか。なにそれしょぼすぎ。

しかも、一緒に食べてるのが初対面の男って。

よくよく見れば、夏川の履いている上靴には、私と同じ赤いラインがデザインされている。

つまり、同じ高校2年生ということだ。

まだ4限目の最中なはずのこの時間にこんなところにいるということは、生活態度は悪いらしい。

まあ、着崩された制服とツンツンに立てられたオレンジに近い髪を見た瞬間から、それは一目瞭然だったけれど。



「藤倉サンはさー、なんでフェンスによじ登ってたの?」



バリバリとうるさい音をたててクリーム入りメロンパンのパッケージを開けながら、きょとんと夏川が首をかしげた。

……マジで馬鹿なの? このオレンジ頭。

咀嚼したパンをごくんと飲み込んでから、私はいたって表情を変えずに答える。



「飛び降りようと思って。ここから」

「へ~。なんでまた」

「………」



いちいち予想外の反応してくるわねこの男。

口のまわりについた砂糖を払って、私は床に置いていたいちごオレを口に含む。

……甘い。メロンパンとこれ合わせて買ってくるって、どんだけ甘党なの夏川。
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