ちょっと黙って心臓
あたしたちは男女別の出席番号が、揃って10番。だから2年に進級した直後、席が隣り同士で。

そのときから、あたしたちはケンカばかり。クラスメイトにも、夫婦ゲンカはやめろ、なんて、からかわれるくらい。

ずっと、そんな感じで来たのに。志摩は口が悪くてデリカシーなくて、女心なんてまったくわかってくれなさそうなのに。……どうしてかあたしは、いつの間にかコイツをすきになってしまった。


そして、何度目かの席替え。再び隣りの席になったあたしに、日直という、チャンスが回ってきた。

……今の『ケンカ友達』のポジションを、少しでも変えたくて。だからどうにか、がんばりたいなって思うのに……。

こんなふうに、一緒にいるだけで言い合いしちゃうなら。もう、早くこの場から逃げ出しちゃいたいよ。



「……志摩、消しゴム取ってよ」



うっかり間違えた漢字を消そうとしたら、手元に消しゴムがないことに気が付いた。

……そうだ、さっきコイツにぶん投げたんだった。

見当たらないけど、たぶん、その辺に転がってるはず。そう考えて目の前の志摩に頼んだら、奴はマンガから顔を上げてあからさまに面倒くさそうな表情をした。



「はあ? なんで俺が」

「アンタのからっぽの頭に弾かれて飛んでったんでしょうが」

「元はといえば鈴村が投げたのが原因だろ!!」

「さらに元はといえば志摩の発言が原因だし!!」



ああまた、いつもの言い合い。

内心悲しくなっていると、志摩が乱暴な動作でマンガを閉じた。

……ていうか、なんでコイツは私がせっせと日誌を書いてる目の前でマンガ読んでるんだ。そっからおかしいでしょ。

うらみがましい視線を送った先で、はあっと、志摩がため息を吐く。
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