天使の贈り物 





「悪い、バイトの後家で話あるから。
 新曲の相談乗ってくれよ」

「了解。
 んじゃ、バイト行ってくるわ。
 そっちも成実ちゃんに宜しく」



電話を早々に切るとその後、
5時間は居酒屋でバイトする。



バイトを終えて、自宅に戻った頃には
23時頃。


その後、シャワーを浴びて
隣の晴貴の部屋をノックしてドアを開けた。



部屋中に散らばった五線譜。

ところどころ、歌詞を考えていたのか
言葉を書き留めたメモ用紙が散乱してる。


そんな中、ギターを抱えて
フレーズを弾いては首をかしげる。




「晴貴、遅くなった。

 とりあえず、大将が少し持たせてくれた。
 飯、食った?」

「おっ、奏介。
 マジかぁ、もうそんな時間か」


ようやく自分の世界から戻ってきたらしい
晴貴は、頭をかきながら時計を見つめる。



「成実ちゃんは?」

「成実は今日は家。
 さすがに、連泊はマズいだろ。
 アイツの親に嫌われるのも嫌だしな」



そんなことを言いながら、
晴貴は散らかった紙をかき集めて
デスクの上に置く。

作られたスぺースに大将から貰った
手土産を並べて、
少し食事をすすめる。


晴貴は、カクテルグラスを取り出すと
そのまんま、思いつくままにリキュールと氷とジンを
オレンジジュースやグレープフルーツジュースなどを
入れてシェーカーを振ってはグラスへと注いでいく。



「うわぁ、ちょっと行けてない色だな」
「そうだね」
「まっ、悠生あたりには切れられそうだけど
 俺の場合、綺麗な色よりグロテスクな色の方が
 美味しいし」


なんて言いながら、
出来たばかりのカクテルを飲み干しながら
次のカクテルを作っていく。

晴貴がカクテルを作って、
俺がカクテルを作って。


素人カクテルを次々と
飲み干して、居酒屋の大将の土産を全部
二人の胃袋へと流し込むと、
晴貴は再び、かき集めた紙を手元へと引き寄せた。


晴貴の手は、空(くう)を彷徨いながら
エアギターをつま弾くように、指先だけが小さく動く。


テーブルの上に散らかした
食器類を台所に運んで、洗い物を終えると
再び、アイツの部屋へと戻った。



アイツの部屋に腰を下ろして、
アイツが散らかしたメモへと視線をうつした時
俺の携帯が着信を告げた。


着信相手不明の電話番号。


戸惑いながらも、
成実が連絡した美空からかも知れないと
晴貴の部屋を出て自室へと戻り受信する。

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