天使の贈り物 



晴貴の部屋に戻ると、
アイツは、俺を真っ直ぐに見つめながら
何だかご機嫌で。



「美空だろ?
 電話」

「んん、まぁ」

「んで、アイツなんだって?」

「明日、9時にスタジオ手伝いに行くことになった。
 その後も、時間くれってさ」

「ふぅーん」



興味があるのかないのか、
わからない程度の相槌を打って
アイツは自分の引き出しから
袋を取り出して投げてよこす。


反射的に受け取ったそれは、
コンドーム。


マジかよ。



「奏介、成実のお膳立て無にすんなって。
 お守りに必要だろ。

 待ってないで、狼にでもなって来いって」




狼って……
晴貴みたいになんでも
勢いで行けるわけないだろ。



そんなことをいいながらも
受け取ってしまったコンドームを
今更、突き返すのも出来なくて
ポケットに突っ込む。





そのままその日は、明け方まで
晴貴の考えた新曲を煮詰めて仮眠。


7時ごろに起き出して、
朝のシャワーの後、
着替えを済ませて、
そのまま相棒と共に美空の待つスタジオへと向かった。



スタジオでは相変わらず、
アイツの透明感のある歌声が
部屋中に響く




スタジオで借りたアコースティックを片手に
アレンジを変えて、演奏する。



既存の美空たちの曲も、
アレンジ一つで、
また違った印象のサウンドへと姿を変えていく。


予約していたレンタル時間があっと言う間に過ぎて、
何曲かの、次回のLIVE用の演奏準備が終わった頃
美空は俺を外へと連れ出した。



映画館に、街の中を歩いてショッピング。

クレープ屋に立ち寄っては、
甘そうな苺と生クリームたっぷりのクレープを
美味しそうに頬張る。



今まで俺が見たことのない
美空の表情が、俺自身を楽しませてくれる。


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