天使の贈り物 




「……ねぇ……。

 泣いてる?」



小さく呟いた声が
車内に響く。




「……ごめん……」



ごめん?



その言葉の意味って何?




そのまま聞き返したいのに、
そーすけさんの表情は
それ以上、踏み込める状態ではなくて
私はそのまま黙って
車の中、身を小さくして
そのまま車窓の
イルミネーションを見つめ続けた。



喉の乾きを感じながらも
潤すことすら出来ず、
ただ……そーすけさんが
走らせるままに
車の中に留まりつづけた。




私のが住む居酒屋近く、
ハザードをつけて
道路に寄せた車は静かに停車する。




「有難う……」

「ううん。
 こちらこそ。

 おやすみなさい」

「おやすみなさい」



もう……そーすけさんの表情は
いつもの笑みに代わっていて、
穏やかに微笑みながら
私を車内から送り出した。


車のドアを閉めたのを合図に、
そーすけさんは手を軽くあげて、
ハザードを消すと、
夜の闇に車を紛らせていった。



近所のコンビニで、
ペットボトルのお茶を購入して
一気に飲み干す。



瞬く間に体の中に
吸い込まれていく水分が、
先ほどまで、
自分自身に起きていた緊張を物語る。





……大好きなの……。




多分……
恋をしてると思うの?




こんなにも鼓動が
早くなるのを感じるから。
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