春に想われ 秋を愛した夏


「実は、今日。会社に秋斗が来て」
「うっそ。ホントに?」

私の言葉に、塔子が本当に驚いたようで、目を丸くしている。

まさか、連絡云々をすっ飛ばして、逢ったなどという情報が私から出るとは思ってもみなかったのだろう。
塔子は、身を乗り出すようにして興味を示しはじめた。

「それで?」
「突然すぎて、驚いちゃって……」

「うん」
「素っ気無くしちゃった……」

素っ気無くなんて、生易しい態度などじゃなかったけれど、詳しく説明する余裕もない。
突然すぎる再開に、今も気が動転しているような状態で、説明しようにも混乱の只中だ。

「秋斗君、元気そうだった?」

塔子は、当たり障りのない質問をする。
複雑な表情を浮かべている私に、気を遣っているんだろう。
私は、それに静かに頷いた。

そっか。と懐かしむように呟く塔子。

私と秋斗の間にあんなことさえなければ、きっと今でも四人でつるんでいたかもしれない。

「ごめんね……」

テーブルに零した私の呟きに、何言ってんのよ。と豪快に笑ってみせる。


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