春に想われ 秋を愛した夏



「あいつ、人なんて殴ったことないだろ? まー、春斗の場合は殴るシチュエーションになりようもないだろうしな。でも、普通。急所はなしだろ~」

秋斗は、マジで鼻が折れたと思った。とぶつくさ呟いている。

「マジ、星散ったし」

殴った春斗自身も、まさか鼻に当たるとは思っていなかったらしく、目測を誤りすぎていて驚いていたとか。
しかも、頬じゃない分、自分もかなり痛がっていたらしい。

「あいつ、マジでアホだぞ」

声を上げて笑う秋斗は、近いうちにまた四人で集まれたらいいな、と優しく呟いた。
その言葉に頷いて、私は今までを振り返る。

秋斗を想い続けた大学時代。
いっぱい涙を流したその四年の間に、私のすぐそばで春斗も同じように切なく辛い想いをし続けていた。

春斗に想われていることにも気づかず、ただひたすら秋斗だけを想い振り回され。
そんな自分が嫌で、秋斗のことなんか忘れてしまえればいいのに、と久しぶりに再開した春斗の想いに寄り添い、そして傷つけた。

身勝手になってしまう自分の気持ちに嫌気がさしても、どうしようもなく想いは一途で。
私は、こうして秋斗と共にいる。

それが正解なのかどうかなんて、今でもわからないし。
恋に正解なんかないといっていた塔子の言うように、正しい正しくないだけでは割り切れないのが人の思いなんだろう、と今は感じている。

ただ言えるのは、傷つけた人のためにも、幸せにならなくちゃいけないということ。
精一杯、愛し合わなければいけないということ。

この夏にした恋を後悔しないために――――。




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