春に想われ 秋を愛した夏
「ねぇ。それにしても、メールの内容ってなんだったの?」
「それ、まだ訊くか?」
呆れたように嘆息したあと、私がしつこく訊ねると、起き上がった秋斗が渋々口を開いた。
そして、完璧なる棒読みで、塔子から届いたメールの内容を話す。
「香夏子は、実は血液の病気だって。夏に何度か倒れたのも、それが原因だった。今店で血を吐いて倒れた。救急車呼んだけど、全然こないって。香夏子を愛してるならはやくそばに来てあげて」
照れくさいのか、話し終えると僅かに目を逸らして苦笑いしている。
塔子のついたあまりにも酷い嘘に呆れながらも、素直に騙され逢いに来てくれた秋斗が愛おしくてたまらない。
「ありがと」
「マジ、心臓に悪い」
「大丈夫。私はいたって健康だから」
耳元で囁くと、そりゃ結構と笑っている。
「春斗が俺の立場だったら、アイツの方が倒れてるだろうな」
秋斗は、そんな風に言って苦笑いを零す。
「春斗に……、ちゃんと謝りたいな」
「謝る必要ねぇよ」
「どうしてよ」
「俺、代わりに殴られてっから」
「えっ?!」
驚いて秋斗の顔を見返すと、マジで。と息をついた。
「一発殴らせたら、元の四人に戻ってやるってさ。何で上目線なんだよな?」
そう言いながらも、秋斗は春斗に感謝しているようだった。
そうして、鼻の絆創膏に触れる。
「もしかして、そこを殴られたの?」
私の質問に深く頷く。