強引男子のイジワルで甘い独占欲


「告白されてなんとなく付き合ってただけだし、気持ちも情もなんにもないから。
俺は痛くもかゆくもないし、裏切られたところで飯も余裕で食える」
「……最低」
「は? なんでだよ。最低なのはあいつらだろ。決まった相手がいながら陰でこそこそ付き合ってたんだから」
「それは、真剣に付き合っていて今これ以上ないくらい傷ついてる私が言える事で、なんとなく付き合ってた眞木隼人が言える事じゃない」
「立場的には一緒だろ。俺もおまえも」
「一緒じゃないっ」

思わず声を荒げた私を、眞木隼人は顔をしかめて見ていた。

「朋絵の口癖を知ってる? 寝る時どういう体勢で寝るかとか、寒がりなのか暑がりなのかとか知ってる?」

黙った眞木隼人の答えを待たずに続けた。
感情的になってしまっていて、止められなかった。

「私は知ってるっ。
慎司が左向きじゃないと眠れない事も、女の私よりも寒がりな事も、ケンカして私が悪くてもすぐごめんって謝っちゃう事も……全部知ってるんだから!
社会人になってから必死にパソコンのブラインドタッチ覚えた事だって、人に気使いすぎる事だって……甘えてる時の声色だって!」

慎司の事なら何でも知ってるんだから、一緒にしないで。
最後の言葉が震えたのは、収まったハズの涙がまた溢れたからだ。


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