強引男子のイジワルで甘い独占欲


「そうだね……。ごめん」

そう困り顔で微笑みながら謝る慎司にため息をついてから、で、何の話ですかと聞き返す。
慎司の、傷ついてますって書いてあるような顔に、余計にイライラが増した。
まるで私の方が悪いみたいに思えてしまって。

金曜18時のオフィス街にはサラリーマンが溢れていた。

「ああ、いや……。ただ見かけたから話しかけてみただけなんだ。気分を悪くさせてごめん。
佐野さんはここで待ち合わせでも?」
「まぁ、そんなところです」
「噂聞いてるけど……本当に眞木さんと?」
「……まぁ、そんなところです」

社内にあれだけ広まっていれば慎司の耳まで届いていてもなんら不思議はない。
むしろ知らない人間を探す方が厄介そうだ。

昨日の夕方、懲りずに隣の席の小谷先輩が眞木との事を聞いてきたから、だから付き合ってますってば!何度確認すれば気が済むんですかっ!と半ばキレながら答えた。
ついでに、課長を睨みつけて小谷先輩を止めさせた。

そうなるともう、両者が認めたって事で元々大きかった噂は膨大に膨れ上がっていき……収拾不能状態。

だからこそ、誰か他の部署の女性社員に詰め寄られたりしないように昨日も今日も定時退社で脱出してきたのだけど。

いくら眞木が睨みを利かせていたって、すり抜けてくる女性社員くらいいそうだから。





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