強引男子のイジワルで甘い独占欲



基本的に人前で涙を流すのは嫌いだ。
弱音を吐きだすのも、弱点を晒すのも嫌い。
悔しくなるだとかそういう具体的な理由もなくただ嫌だから、多分根っからの苦手なんだと思う。

それは家族や友達、恋人、どんなポジションにいる人が相手でも苦手なものは苦手でそれが変わる事はなかった……ハズなのに。

眞木に対しては気が緩んでしまうのはなぜだろう。
出逢ってから一ヶ月でもう二度も涙を見せてしまった事も、それを後悔するどころかスッキリしてしまっている自分も不思議で仕方ない。

男女関係なく、今まで誰にも甘えて慰めてもらうみたいな事はなかったからか……それとも別の理由があるのか。
眞木に握られた手の温かさが一週間経った今でもはっきりと記憶に残っている。

「ちーちゃん」

もうすっかり日常化している眞木のお弁当を頂いて、その代わりにデザートを差し出してふたりで食べて。
眞木よりも先に休憩室を出てオフィスに向かっている時に呼び止められた。

社内でそんな呼び方をする人をひとりしか知らないから、振り向くことを少しだけ躊躇してしまった。



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