強引男子のイジワルで甘い独占欲


「珍しいね。社内で会うなんて」

振り返って言うと、朋絵がふふっと笑う。

「私もびっくりしちゃった。後ろ姿見かけて咄嗟に呼び止めちゃったの」

慎司との事は誰が悪いわけでもないと思っているし根に持っているつもりもないけれど、よく普通に話しかけられるものだなと感心してしまう。
私が逆の立場だったら咄嗟に話しかけるなんて到底無理だし、むしろ咄嗟に回れ右して朋絵の視界の届かないところに逃げ込んでいるところだ。

言い方は悪いけれど、結果的に言えば恋人を奪ったわけなんだから。

本人にその自覚がないならまだ分かるけれど、慎司が朋絵を選んで私の前からいなくなった日、朋絵は私に謝ろうとしていた。
という事は、少なくとも一ヶ月弱前までは、朋絵は自分が悪いと思っていたって事になる。

それなのに気にした様子もなく話しかけてくるのは、どういった心境の変化なんだろう。


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