強引男子のイジワルで甘い独占欲
もう時効だと片付けたのか、それとも私との間にいつまでもわだかまりが残っているのが嫌で何ともない振りをしているのか。
だけど、例え後者で気を使って何でもありませんって風に話しかけてきているとしても、まだあれから一ヶ月弱しか経っていない。
この場合の普通がどれくらいを指すのかは分からないけれど、私だったら少なくとも親戚で集まるって話がでない限りは自分から話しかける事は避けるかもしれない。
でも、近々親戚で集まるって話は私の知る限りないし、仕事で顔を合わせる事もないのだから、こんなに日を急ぐ必要もないハズだ。
なのになんで今。と疑問に思えて仕方なかった。
「なにか用だったわけじゃないんでしょ? 私もう戻るところだから悪いけど……」
「慎司さんの事、悪かったなって思って」
ごめんね?と微笑みを浮かべながら謝る朋絵に、最初は空耳かと思った。
そんな軽いトーンで切り出せる話ではないと思ってたし、慎司や朋絵にとってもそうだと思っていたから。
考えてみれば、朋絵と恋愛の話をした事はないから、朋絵がどんな恋愛観を持っているかとかそういう事はまったく知らない。
だけど性格は知っているつもりだったから、まさか、こんな社内の廊下でそんな話題を持ち出せる子だとは思わなかった。