手話~僕等のカタチ~
素直に嬉しかった。
………が。
「…声も出ないのか?」
もし、そうだとしたら……
『はい。
耳が聞こえなくなったショックで出なくなってしまったんです。』
あまりにも、辛すぎる。
だからメモなんか使って…
「不便だろ?」
『もう慣れましたから。』
そう言って笑う瞳はどこか悲しそうで…
「そっか…
声、出るようになるといいな。」
『はい。』
黒く…暗く沈んでいるようだった。
俺が彼女の瞳に光を宿らせることは出来ないのだろうか。
出来るのであればそうしたい。
……いや、そうしてみせる。
その思いを、心に強く刻んだ。
それから俺は、笹村とお昼を一緒に食べる約束をして、4組の教室をあとにした。