私がここに居る理由
プロローグ




高校二年の春、住む家が無くなった。




厳密に言うと無くなったというよりは住めなくなったが正しいかもしれない。




中学卒業と共に家を出た私はバイト代でやりくりしながら、
このおんぼろアパートで一人暮らしをしていた。




4畳半という狭い空間だが、毎日学校にも通えるし家賃も安いので大方満足していたが、


それも今朝までの話。




夕方バイト先から帰宅するとアパートの大家さんが眉間に皺を寄せて話しかけてきた。





「お昼前にスーツを着た男達が訪ねてきたのよ。そしてこれを置いて行ったわ。」




大家さんは私に一枚の紙を差し出した。




〝請求書〟




紙の上部に大きくそう書かれたその紙は紛れもなく私宛のものであった。





【請求額・5000000円】




「悪いけど、借金のある方の契約はお断りさせて頂いてるの。

うちは経営が厳しいもんだから家賃をちゃんと払える保証のないに人は立ち退きをお願いしているわ」





実を言うと、私には父親が残した借金の返済をするという義務がある。




バイトをしながらなんとか少しずつでも返済すようとやりくりするため、

このアパートに借金の存在を隠し住んでいたのだ。




もちろんこのアパート以外に宛てなどない。



「隠していてすいませんでした。家賃の支払いは明日でしたね。

お金を置いてすぐに出て行きます。」


私がそう言うと大家さんが申し訳なさそうな顔をした。


「そんな直ぐにだなんて言ってないのよ…それに他に宛てはあるの?」



「宛てはありませんが大丈夫です。
一年間ありがとうございました。」



その日私は少ない荷物をまとめアパートを出た。
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