真紅の空



「ど、うして……そんなこと、言うの?」


「えっ?」


「暁斉は!あいつは生きてる!
 死んでるなんて……どうしてそんな酷いこと言うの!」


「それは……」


「酷いよ仁。暁斉はここにこうしているのに、
 生きていることを否定するなんて……」


「だって!おかしいだろ。
 いるはずのない人間なんだぞ。
 由紀は過去の人間と今いる俺と
 どっちが大事だって言うんだよ!」



はっと息をのむ。
あたしはそれにすぐに答えることはできなかった。


どっちも切り捨てることが出来ない。
前は迷わず仁、一択だったろうと思う。


それは大事なものが家族と仁以外に何も見いだせなかったから。


でも、あたしはもう、触れてしまった。
結城暁斉という人物に、触れてしまったから。


彼がたとえ過去の人だったとしても、
史実上名前の残らないような人だったとしても、
一度触れてしまえば、あんな悲痛な手紙を目にしてしまえば、
関わらずにはいられなくなってしまう。


それって、いけないこと?





「……は」


「えっ?」










「あたしは……人を愛しちゃいけないの?」













仁が悲しそうな顔をした。
口を微かに開けて、何か言いたそうにする。





「由紀は、俺のこと、好きじゃないのか……?」




ポロリと、仁の瞳から涙がこぼれた。


違う。そうじゃないの。
そういうつもりで言ったんじゃ……。











―――ゆき―――














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