真紅の空



「ここにおります。暁斉様」


はっと息をのんで襖の方をみると、すっと襖が開いた。
そこにはひれ伏した則暁くんの姿があった。


ほっと胸をなでおろす。
良かった。まだ生きていた。


則暁くんは一切惑うことなくそこにいた。


今日死んでしまうようには微塵も感じられない。
いつもと変わらない柔さで微笑んでいた。


「いたのか。今までどこにいたんだ?」


「実はお願いがございまして。
 数日の間、暇を頂きたいのでございます。
 私も、平民の世をゆっくりと見て回りたくなったのです」


数日だなんて。
行ってしまったらあなたはもう、戻ってこられないのに……。


暁斉は呆けたような顔をすると、
しばらく固まって、それからははっと笑った。


「お前が暇を?めずらしいな。
 どういう心境の変化だ?まぁ、構わないが」


「ありがとうございます。支度は出来ておりますゆえ、
 今から行ってまいります」


「今から?随分急だな」


「申し訳ございません。逸る気持ちを抑えきれず」


にこりと笑う則暁くん。


こんな時なのに、そんなに柔い笑い方が出来るなんて。
なんて立派なんだろうと思うとわっと泣き出したくなった。


暁斉は目を瞬かせて則暁くんを見たけれど、
特に気にすることもなく頷いた。


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