毒舌彼氏と最悪彼女
彼と付き合い、私は高校二年生になった。
進級とともにクラス替えをし、二年生から新しいクラスでやっていくことになる。
友達は…一人だけ、親友ができた。一年生の時のクラスで。
名前は、菅野朱里(すがの あかり)。
私とは真逆の性格で、強くて優しくて姉御肌な人だった。
お姉さんのいない私にとって、その子はまるで本当のお姉さんのような存在だった。
その子とはクラスは離れちゃったけど、離れてからもずっと仲良しだった。
二年生になってから新しい友達は…一応できた。
しかもグループまでできちゃって、私はその中でのムードメーカーになっていた。
彼氏と友達、両方もできて最高だった。
彼との最初のやりとりは電話。まだお互いの顔も知らないドキドキの一ヶ月目。それから二ヶ月目はお互いの愛を深め、三ヶ月には初対面。
…初対面の時、本当に驚かされた。それまで顔をお互い知らなかったからこそ驚かされた。
ソーシャルネットワークってやっぱりこんな…そう思い知らされた。
翔…その名前が合うような感じの人じゃなかった。
単刀直入に彼の外面を一言で言うと、"デブ"
いや、デブなのかぽっちゃりなのか…狭間くらいか。例えるならプーさんくらいの体型、だと思う。
正直な話、印象ぶち壊しで最悪だった。
初めて会った時の服装は全身黒尽くめだし…本当に最初の印象は最悪だった。
けど彼はすごくいい子だった。
優しく明るく、そばにいるだけで笑わせてくれる。やっぱりソーシャルネットワークのときと変わらずいい人だった。
それに彼と付き合ったことで、いろんなところに行ったし、いろんなことをした。
"彼氏"とすることは私からしたらほとんどが初めての経験だったからすごくすごく嬉しかった。
買い物したり、ご飯食べたり、時にはディズニーに行って遊んだり…ハグも、キスも…全部が全部、私にとって"彼氏"と一緒にすることはこれが初めてだった。
"遊びなんじゃないか"
そんな気持ちさえどこか遠くへ行ってしまうくらい彼のことを好きになっていた。
こんなに好きになった人は生まれて初めてかもしれない、そう思うくらい愛おしくて仕方なかった。
…けど、彼には何か裏があった。
彼は心臓が弱く、しかも珍しい水アレルギー…と、彼本人はそう言っていたが、全部嘘だっていうのはわかっていた。
彼は嘘つきだ。
付き合っていた頃は彼を信じて付き合っていたけど、のちにある出来事で全てが嘘だったことに気づかされる。
十一ヶ月間、彼とは付き合っていたけど、本名もよくわからず、年齢も住んでいる場所もよくわからなかった。
…十一ヶ月を迎えたその日、彼は突然私に別れを告げてきた。
ちょうどその時、保育園の頃から一緒だった幼馴染と久しぶりに会ってた時だったからタイミング悪すぎ、と思いつつ胸が締め付けられるように痛くなった。
今でもそれを鮮明に覚えている。
「友達に戻らない?俺たち」
別れを告げられたのはメールだった。
彼から送られて来るメールの一文字一文字に胸が締め付けられ、着信音にさえビクビクしていた。
彼の着信音は別なものに変えていたからすぐに気づく。正直心臓が爆発しそうだった。
ショックのあまり、その場に立ち尽くして大声で泣いてしまった。友達もいきなりのことでびっくりしていた。
…けど私はそんなことに構わず、大声で泣いた。