まんまと罠に、ハマりまして
距離感
「ちょっと風強いな」
「でも、気持ちいいですよ」
「そうだな」


週末。
課長のリクエスト(?)通り。
行き先は私が決めて、初めての遠出。


「運転、疲れませんでしたか?」
「助手席。緊張しませんでしたか?」
「!かちょ…、上條さん!」
「あっ。また課長って言いそうになったろ?」
「え?そ、ですか?」


どうやら。
あの夜、私は課長を名前で呼んでいたらしく。


「ちゃんと、上條さん、って…」
「ちゃんと?」
「…ちゃんと…」


意識が遠のいて、で、そこの記憶が私にはなかったんだけど…。


「まぁ、いいとするか」


まだこんな風に課長にいじられはするけど、何とか『上條さん』とは呼べるようになった。
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