【完】こいつ、俺のだから。



「……なんで?」



「そんな気分だからだ。おら、もういいだろ。とっとと帰るぞ」



「わっ!」




あたしのカバンを左手に持ったまま、右手は当然のように、しっかりあたしの手を握る佐野。



強引に引っ張るくせに、繋ぐ時はまるで、大切なもののように優しく手をとるんだ、こいつは。



それは、佐野の性格そのものな気がした。



強気でわかりずらいけど、実はすごく優しい。


……そんな感じ。






帰り道、もうすぐであたしの家に着くところ。



「今週の金曜日な」



「ん?」



ぼんやりと、佐野の左手にあるふたつ仲良く並んでるふたつのカバンを見つめていたときだった。



右手のぬくもりは、未だ離れない。



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