【完】こいつ、俺のだから。
そうなのだ。
こないだのリレーの走順決めで、みんなはあたしと佐野を茶化してきて、走る順番をくっつけた。
おかげであたしは、佐野にバトンを渡さないといけない。
「仁菜は走るの速いんだし、別にいいじゃない」
「そういう問題じゃなくて……」
佐野にバトンを渡すのがなぁ。
光の言う通り、走るのはそこまで苦手じゃないけど。
そう思ってたときだった。
まるで、人気ゲームでよく下画面に「モンスターが現れた」と表示されるかのように、あたしの前に3人トリオの女が姿を現したのだ。
「中原さん、調子に乗らないでよね」
その佇まいは、まさにモンスターそのもの。
この人達、あれだ。
この前、佐野のことでつっかかってきた人たちだ。
「佐野くんと付き合ってるからって、近づきすぎなのよ」
「そーだそーだ」
文句を言い捨てると、あたしの横を通り過ぎようとする。
よかった。今回は戦闘態勢ではなかったみたいだ……。
確かに、こんなところで前みたいにぶとうとしてきたら、それはそれで人目について大変だけどね。