【完】こいつ、俺のだから。
「いえ、あたしは着ません。
ちょっと人待ってて……、それで暇だったからつい……」
自分でも驚くほど、饒舌になってるのがわかった。
動揺してるって、バレてしまいそう。
「そうなんだ、残念。見た瞬間、明日絶対来ようと思ったのに」
「……」
あぁ、また……。
またあたしの気持ちを揺るがすことを、この人は言う。
「誰待ってたの?もしかして、彼氏?」
「…………」
さっきの饒舌っぷりはどこへ行ってしまったんだ、あたし。
頑張れ。顔を上げて、制服持って〝着替えてきますね〟それだけ言うんだ。
ドア付近にいた先輩は、ゆっくり教室の中に入ってきて、あたしに近づいてきた。
「ねぇ、仁菜」
足音が近づいてくる。
あたしは一歩、うしろへ下がった。
あのときとデジャヴだ。……先輩に突然、別れを告げられたのも、放課後のこの教室だった。
なにかを言われる前に、引き戻される前に、
「先輩ごめんなさい。あたし、着替えてきますね」
早歩きで、もう一個のドアの方へ向かった。