【完】こいつ、俺のだから。
そう言うと、前野は目を伏せながら俺の手を離した。
〝ありがとう〟。
そのとき口にした言葉を、忘れはしない。
――タイムリミットよりも早く、心の準備をした。
それは、3つ目の願いを言うこと。
その時がきたら告白するつもりだった。
……俺の理性がもろいあまり、予定より早く告白するハメになったけど……。
でも、もういい。
俺の気持ちは伝えた。
キスまでして伝えちまった。
……もう二度と、ふたりでドーナツ屋に行くことがなくても。
……真っ正面から、お前の素顔を見れなくても。
笑ってる姿を遠くから見れれば、それで十分。
だから……
――『佐野っ!』
もう、お前を解放してやるよ。
もう、俺のところに戻ってこなくていい。
これからは、お前のこと1番に笑わせてくれるヤツのところに行けばいいんだ。
……戸田直人のところに、戻っていいんだよ。