【完】こいつ、俺のだから。
あのね、佐野。
これはあたしだけの秘密にしとこうと思ってたんだけど、実はあたし、あの時けっこう嬉しかったんだよね。
『こいつ、俺のだから』
自己中っぽいそんな言葉であたしを助けてくれたあんたに、
あり得ないって思ったのはもちろんだったけど。
でもそれ以上に、柄にもなくちょっと嬉しいとか思ったんだ。
だってそれがきっかけで、久しぶりに佐野と話せたから。
「明日の放課後行こっか」
「え?」
「ドーナツ屋さん、明日行こ。佐野、あたしの都合に合わせてくれるんでしょ?」
「……し、仕方ねぇな。まぁ明日はたまたま暇だったから、別にいいけどよ」
不思議。
いつもはムカつく憎まれ口も、今はすっごく可愛く思える。
ていうかここまでくると、むしろ清々しいよね。
ふっと笑ってしまう。