【完】こいつ、俺のだから。
「そんなの決まってるだろ」
諦めを含んで目を閉じたあたしに届いた、聞き覚えのある声。
ぶたれると思ってたのに、痛みは全然やってこなくて。
「俺がこいつに、ベタ惚れだからだよ」
それはまるで、あたしの問いに答えてくれてるみたいだった。
「……佐野?」
ゆっくり目を開けると、すぐ隣にはあたしをぶとうとした女の腕を掴んでる佐野がいた。
「さ、佐野くん……」
女の集団は、〝まずい〟というような顔をしている。
すぐに胸ぐらを掴まれていた手は離された。
「こいつに文句言うなら、俺が聞くけど」
射るような目で、女共を睨む佐野。
集団は肩をビクッとさせて、小さく謝ると走って逃げて行った。