リトライ。
好きなものを嫌いだという日々は苦しくて
自分という存在がどこにあるのか分からなくなってしまった。
でも。
変われたんだ。
ある人のたった一言で。
「私は途中で諦めちゃったけど……沙奈は諦めなかったんだね」
「ううん、違うの」
私は陽介のくれたリストバンドを握りしめた。
「実は私もね、1回諦めちゃったの……」
「えっ」
「でもね、ある人がもう1回やってみようって言葉をくれたんだ」
陽介がいなかったら、きっと今の自分はない。
諦めて、ただ学校生活を過ごすだけの3年間になっていただろう。
彼のお陰で見えて来た景色。
私はこの景色をずっと忘れない。
「なんか、沙奈。すごく楽しそう……」