リトライ。



好きなものを嫌いだという日々は苦しくて

自分という存在がどこにあるのか分からなくなってしまった。



でも。

変われたんだ。


ある人のたった一言で。



「私は途中で諦めちゃったけど……沙奈は諦めなかったんだね」


「ううん、違うの」


私は陽介のくれたリストバンドを握りしめた。


「実は私もね、1回諦めちゃったの……」

「えっ」


「でもね、ある人がもう1回やってみようって言葉をくれたんだ」


陽介がいなかったら、きっと今の自分はない。


諦めて、ただ学校生活を過ごすだけの3年間になっていただろう。


彼のお陰で見えて来た景色。


私はこの景色をずっと忘れない。


「なんか、沙奈。すごく楽しそう……」






< 248 / 266 >

この作品をシェア

pagetop