雫光
黎明と大和御前に言われて、渋々と座った。
「あのね……かるた、きれいなの。」
常磐はたどたどしい言葉で言いながら、戸棚のカルタを出した。
「あのひと……が、西洋の、きれいなもの…………だから、おみやげ。って。」
“あのひと”とは誰かは思い出せないでいる様子だった。
しかし、思い出を少しづつ思い出していることは確かだ。

『一人にして悪い。』
頼光は申し訳なさそうに言った。
『これ。』
そう言ってカルタを渡す。
『綺麗だろう?西洋のものだ。先日、遠くへ出陣した帰りに商人から買ったのだ。……友達を作って、みんなでやるといい。』
『……ともだち、なんて。』
常磐には、仲間といっても戦いの上での存在しか居なかった。

「おともだち……だから。」
常磐は不安そうに大和御前を見る。
「いいのか?大和、うれしいぞ!」
大和御前はぱぁっと目を輝かせた。
「常磐、今から大和と常磐は友達じゃ!」
「……うん。」
常磐は笑う。
「それで、黎明も就友も友達じゃ!」
「宜しくな。」
「何でおれまで。」
「……うれしい。」
にこりと笑む黎明と溜息を吐く就友に常磐は笑う。
「就友が読み手じゃ!良いか?それで、負けた人が次の読み手じゃ!!」
「はいはい。」
就友はとうとう、抵抗を諦めた。

きゃっきゃと笑う声に仄かに光が差す。

(……貴方には敵いませんね。)
心の中で就友は言った。

そんな光が眩しくてやさしい。

優しい光は手を差し伸べる。

いとも容易く、闇から引き上げるのだ。

それに救われる自分がいる。

目の前の女性もまた、そうだろう。

「——。」
就友は札を読み上げた。
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