【続】三十路で初恋、仕切り直します。

「鉄っちゃん先輩ってばそんなに尽くされて幸せ者だね。それにすごいね、優衣ちゃんの女子力……!」


まさにここぞときに発揮すべきものが女子力というものなんだろうと感心してると、優衣が「何をのんきなこと言ってるの」とすこしきつい口調で詰め寄ってくる。


「泰菜みたいにさ、再会して意気投合して、苦労もせずにとんとん拍子で話が進むなんてなかなかないことなんだってば。おまけに相手がこんなイケメンだなんて奇跡みたいなレベルよ。泰菜ってばそれちゃんと分かってるの?」


なぜか説教のような調子で言われたので、思わず背筋を正した。


「泰菜はこのイケメンの彼と結婚したいんでしょ?」
「……はい」
「家庭持って彼の子供も生みたいんでしょ?」
「……………はい」
「だったら余裕ぶっこいてる場合じゃないわよ。もう32、今年でわたしたち33歳よ?それに超遠距離ってハンデもあるのよ?心配じゃないの?半年もあったら身辺整理して仕事辞めて、向こうにいくには十分な時間があったはずでしょ?それを泰菜ってば何をぐずぐずしてるの?」


優衣のもっともな意見が、自覚していたことだけにぐさぐさ胸に突き刺さる。優衣は口調を緩めることなく畳み掛けてくる。


「大学のときからずっと同棲してた三枝ちゃんと幹くん、覚えてるでしょ?」

大学在学中から同棲していたふたりで、卒業後もいつ会っても仲のいいカップルだった。彼らがもうすぐ結婚するというようなことを以前OB会で聞いていた。

「三枝ちゃんたちがどうしたの?もしかしてもう結婚……」
「別れたわよ、とっくに」

在学中から結婚間違いなしと言われていた2人だけに、ショックで言葉が出てこなくなる。


「……あんな長く付き合ってて、お似合いだったのに……なんで……?」
「いくら仲良くてもお似合いでも、タイミング逃せばあとはなあなあになって自然消滅とかよくある話よ?」


そういって優衣は泰菜に向き合ってくる。


「泰菜の彼はあれだけのいい男だし、海外で働いてるくらいなら優秀な人なんでしょ?あえてこういう言い方させてもらうけど、そんな人をこんな離れた場所からいつまでも繋ぎとめておけるほどの自信も自負もあるわけ?」


そういう風に言われると返す言葉もなかった。




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