昭和りびんぐでっど
第壱幕

丑三つ時の古本屋

 時は昭和29年、帝都東京―。

郊外から少し離れた村に私は住んでいる。

ここは東京にもかかわらず空襲がなく村人全員無事だった、そんな静かな村で私は元海軍将校の肩書を背負いながら学校で教師として働いている。

「おっ、終業の時間だ。みんな、宿題はきちんとやっておくんだぞ」

は~い!と生徒たちは元気のいい返事をして帰り支度をし始めた。

「神野くんお疲れ様」

「教頭先生、お疲れさまです」

教頭の安井幸之助、まだ44歳という若さで学校の教頭を務めている。

「慣れてきたか、ここに?」

「だいぶ慣れてきましたね、昔は教えれれる側だったもので―」

「ハハハッそうだったな、君は元軍人だったな」

「そういう、教頭先生も元軍人だったんでしょ?」

元軍人なだけあってお互い支えあって、教員生活を支えあっている。

「せんせー、せんせー!」

私の後ろから強張った声が聞こえた、振り向くと私のクラスの教え子の男の子だった。

「武藤くん、どうしたんだ?」

「せ・・先生、ちょっときて!」

ガシッと小さな手が私の太い腕を力いっぱい引っ張り走り出した。

「ちょ・・・どうした?!何があったんだ?」

「いいから!」

私は武藤くんに連れられて校舎の裏側にやってきた、そこには多くの生徒が野次馬見たく群がってきた。
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