昭和りびんぐでっど

大杉遼太郎

 私は今夜もあの古本屋に行こうと思った。

なぜあんなところで店を開くのか―、なぜ死人があんなに集まるのか―。

「おっ、今日はこれで終わりだな。明日は休みだ、みんな怪我や病気をしないようにな」

はぁ~いと元気のいい声が教室に響き渡った。

「浅岡くん、少しいいか?」

「はい、なんでしょう?」

教頭に呼ばれ私は、廊下に出た。

「昨日の師団の者の正体がわかったよ、近衛第1師団師団長参謀の村井平助中将だ」

「これまた・・、とんだお偉いさまですね」

「オレも正直驚いた、あの後防衛省の上官が供養してくれたよ」

ホント驚いたよ・・、いやー驚いた・・とぶつぶつ独り言を言いながら去って行った。

「あの店主なら何か知ってるかも・・」











午前1時30分、私は昔使っていた外套を羽織り外に出た。

「おぉ、来たか」

「あぁ、あなたは昨日の飛曹長さん・・」

「木原だ、よろしく」

「私は浅岡と申します、店主はいるかな?」

「少佐か、いるぞ」

少佐?

木原さんは店内に入って行った、そして数分後店主を呼んできた。

「あぁ、いらっしゃい」

「どうも」

昨日とおんなじ笑顔で迎えてくれた、眉はキリッと長くまつ毛は女性みたく長い紅顔の美少年だ。

「今日はどんな御用で?」

「あぁ、村井平助という男を知っているか?近衛第1師団師団長参謀の男だが―」

「村井平助・・、少し待ってくださいね」

店主は店内に入り、陸軍軍人らしき男に何やら問いかけていた。

店主でも知らないのか・・?

「どうぞ、中にお入りください」

案内され私は店主と話していた、男の前に連れてこられた。

やはり彼もまた死人、右部隻脚、右腕は肩から肘にかけ骨が露わになってり左足には鎖がついている。

「この方がどうやら知ってるみたいですよ」

年は30前後、精悍な顔つきの男性がこちらを見ている。

「初めまして、近衛師団参謀の大杉遼太郎と申します」

「浅岡です、村井中将をご存知ですか?」

「えぇ、確かに村井中将は第1師団師団長参謀でした」

大杉さんが言うには村井中将はビサヤ諸島の戦いで戦死し、大阪にある真田山陸軍基地に埋葬されたという。

「で、村井中将の遺体は?」

「防衛省の方が青山霊園に再び埋葬しました」





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