ラベンダーと星空の約束+α
 


今度は「くだらねぇ」と言わずに、大樹は紫龍を見て私を見て、

大きな体をこっちに向け、話しを聞く姿勢を見せた。




「紫龍、二人三脚って何の事か分からないけど、流星は『正直な気持ちを言え』って言ったんでしょ?

私も聞きたい。聞かせて?

最近心配だったの。
紫龍にファーム月岡を押し付けているんじゃないかって…

どうなの?気を遣わなくていいんだよ?

正直な気持ちを聞かせて?」




「母さん…俺…まだ決めらんない。

ファーム月岡は好きだよ。

最近色々やらせてくれるから、店の仕事を楽しいと感じる。

けど、父さんの野菜畑も気になるんだ。

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加後の北海道農業の生き残りについて考えている事もあるし、

それを実現させてみたいと言う気持ちもある」




「お前…子供のくせにTPP問題について考えてたのかよ…すげぇな…」




「それと、もう一つやりたい事がある」




「どんな事?聞かせて?」





紫龍は私と大樹の間で視線を一往復させ、

それから斜め上の…多分流星がいるんじゃないかと思う遠い天国に視線を向けて、きっぱりと言った。




「世界を見たい」




「でけぇ夢だな…」




「うん。文学の世界で異国の文化と歴史に触れて、そこの言葉を一語一語覚えて行く内に思うようになったんだ。


本の中の景色を、自分の目で見に行きたいって……


それがただの旅行なのか、それともビジネスなのか、具体的に何をしたいのかまだ分からないけどさ」





まだ中学一年生の紫龍。

当たり前だけど見た目は子供だ。



その小さな子供の体には、大きな好奇心と知識と可能性が詰め込まれていて、

私の目の前でキラキラと眩しく輝いていた。




布団の上に立ち上がり、紫龍の隣まで歩いた。


まだ私の方が少しは背が高いけど、来年にはきっと抜かされてしまうだろう。



< 128 / 161 >

この作品をシェア

pagetop