続・雨の日は、先生と
「すごく、遅くなってしまったけど。」


「うん。」


「随分君を、待たせてしまったけど。」


「うん。」



先生は、ポケットから小さな箱を出して、私の目の前で開けた。

婚約指輪。

くらくらするような、眩しいものが光ってる。


先生は私の右手を取って、小指のピンキーリングを外した。

そして、今度は左手を取って―――


婚約指輪を、薬指にはめた。



「唯、私と……結婚してください。」


「陽、さん。」


「ん?」


「私で、いいんですか?本当に、私で、……いいのですか?」



何故か、涙が止まらなくなって。

陽さんの指先を、濡らす。



「この期に及んで何を言うの。……どうか、ずっとそばにいてほしい。私のそばに――――」


「本当に私でいいのなら、……私も、そうしたいです。」



嬉しいのに、どうしてこんなに涙が出るんだろう。



「陽さんのお心を受け入れて……、私の心を、陽さんに、捧げます。」



はっと息を呑んだ陽さんは。

そのまま、私を優しく抱きしめた。


もう何度も包まれた先生の腕だけど。

この日ほど、幸せに思ったことは、ないよ―――



「唯、私の子を。元気な私の子を、産んでほしい。」


「任せてください。」



ふと見上げると、先生の三日月みたいな優しい目があって。

こんな目をした子が、産まれるといいな、と思った。


先生との未来。

何が待ち受けているかなんて、分からないけれど。


そんな未来を守っていきたい。

先生と一緒に、守っていきたい―――






先生。


あなたの隣にいれば、私は笑っていられるの。


どんな明日が来るんだろう、って。


いつも、わくわくしていられる。



やっとやっと、私の隣に来てくれたあなたを。


もう二度と、手放したりなんてしないよ。


ねえ、先生―――――




。**『続・雨の日は、先生と』Fin.**°
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