裏窓
平和島
平和島に、あさの8時にいる人間が社会のごみでないと言い切れる人間がいるだろうか。
平和島には競艇場、パチンコ屋、ドン・キホーテ、映画館、スパなどの娯楽施設が集結している。
朝8時にいる人間は、パチンコ屋に並ぶか、まだ開放されていない競艇場の入り口で、昨日のレースのリプレイをみながら、一攫千金を夢見ているが、ほとんど信じてはいないのだ、実際のところは。 そう、人生に挽回のチャンスがないことに、本当は気づいている。
負け犬達の中に、濱野屋は立っていた。今日の出走表を丸めたものを左手に、右手には煙草を持って立っていた。
晴れているのだが、ここの空気は濁っている。
濱野屋は壁に寄りかかった。周りの負け犬に話しかけられないよう、目線を遠くへ向けた。いつあらわれるかわからない人間を待つのはつらい。しかし、まだましなのは、今日必ず現れることが間違いないということである。
一時間で煙草を半箱吸った。足元の吸い殻が増えてゆく。
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