とびっきり、片思い。

火花散る





夏休みに入った。


休みの半分が過ぎた頃、私はカナタにファンレターを書いた。



溢れ出す思いを文字にした。



読んでくれますようにと、願いを込めてポストに投函した。


帰宅したちょうどその時、家の電話が大きな音を立てて鳴った。


百合子からの報告だった。



『コンサートの抽選結果が出たんだけどね』




受話器の向こうの声の響きだけで、何となく予想はついた。



「当選しなかった?」


『うん。ごめん…。本当にごめんね』



百合子のせいではないのだから、そんなに謝らないで。



きっと私たち、同じくらいショックなはずだ。



「残念だけど、仕方ないよ。次こそは、行きたいね!」



私は頑張って明るい声を届けた。




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