ヒット・パレード
「ここ、一体どこなんですか?」
辺りをきょろきょろと見回して、陽子が尋ねる。
「ラブホ」
「なっ!!」
まるで、鬼畜を見るような目付きで森脇を睨み付ける陽子に、森脇は慌てて弁解をする。
「誤解すんなよ。あの時間じゃ、泊まれる所なんかラブホ位しか開いて無かったんだって!心配するな、なんにもしちゃあいねえよ」
「じゃあ、その格好は何なんですか!」
「俺はいつも寝る時はこうなんだよ!そういうお前は、ちゃんと服着てるだろうが!」
言われてみれば、確かにその通りだった。それに、森脇がそこまで卑劣な人物では無い事は、陽子にも分かっていた。
「分かりました………とりあえず、服を着てもらえます?」
そう言って、森脇に背を向けてベッドから出る陽子。森脇も「ああ、そうか」と、ベッドから出て服を着始めた。
「あの、私よく覚えて無いんですけど、なんかすいません。色々とご迷惑おかけしたみたいで………」
森脇に背中を向けたまま、陽子は森脇に昨夜酔い潰れて介抱して貰った事への礼を述べた。やはりこういう事は、面と向かっては言いづらい。
森脇はそんな陽子の仕草に、少しは可愛らしいところもあるもんだ。と、微笑みを浮かべた。
そして、背中を向けた陽子に言うのだった。
「まあ、これは貸しにしとくよ。これからアンタには、24時間ライブの件で色々と世話になりそうだからな」
「えっ?」
驚いて森脇の方へ振り返る陽子。
「今、なんて言いました?」
「トリケラトプスは、24時間ライブに出演すると言ったんだ」
そう告げた森脇の表情は、陽子が今まで見た事も無いほどに爽やかな笑顔だった。
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