ヒット・パレード



プログラムの変更に際し、会場のセッティングにも変更が加えられる。


「えっ、アーティストの入れ替えですか?なんだ……もう、結構準備出来てたのに」


突然の変更に困惑顔のスタッフ。舞台の袖には、大俵が上に乗って登場する筈だった巨大御輿(みこし)が用意されていた。


「ジャマだ!こんなもん、その辺の隅にでもうっちゃっておけっ!」


その御輿を見る度に、あの大俵の横柄な態度を思い出す。本田は、怒りに任せてその御輿を思いきり蹴飛ばした。


「ああ~ダメですよ本田さん!それ、中に精密機械が入っているんですから」


それを見ていたスタッフが慌てて本田のもとへ駆け寄って来る。


「精密機械?」


見たところ、精密機械とは程遠い原始的な御輿にしか見えない。しかし、スタッフの話によるとこの御輿の中身には、幾つものモーターやそれを制御する電子部品がぎっしりと詰まっており、それによってこの御輿はまるで人が担いでいるような上下運動をする仕組みになっているらしい。


「大俵さんがコンサートの為に特注で作らせたらしくて、一千万位するんだそうですよ」


「ふん、くだらねぇもん持ち込みやがって!」


きっと、大俵のヒット曲《日本全国豊作音頭》のイメージに合わせたギミックなのだろう。自己主張の強い大俵らしい仕掛けである。


「とにかく、大俵の出演は夕方になった。これはどこかジャマにならない場所に移動しておいてくれ」


本田がスタッフに指示をすると、今度は別のスタッフが本田のもとへとやって来た。


「本田さん、大変です!ステージのイメージモニター、もう入力が変更出来ないらしいんですけどどうしましょう?」


「マジかっ!」


ステージの後ろに設置されたイメージモニター。アーティストの曲のイメージに合わせた映像を映し出すモニターなのだが、既にプログラムを設定済みで順番の変更が間に合わないらしい。


因みに、大俵のイメージ映像は長閑な田舎の田園風景と夏祭りの風景。


一方、デビル・ハンドのイメージ映像は廃墟にさまようゾンビの映像。


大俵 平八郎の身勝手な振舞いは、この生放送24時間ライブのいたる所に歪みをもたらしていた。



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