ヒット・パレード



「本田さん、デビル・ハンドが会場に到着しました!」


本田の「大至急」という言葉を意識してか、デビル・ハンドのメンバーは思っていたよりも早く武道館へと駆けつけてくれた。ステージ衣裳、そしてメイクもバッチリと決めてすぐにでも演奏を始められる状態だ。


番組の窮地を救うべく参上した四人編成のヘヴィメタルバンドを、本田は両手を広げて歓迎した。


「待ってたよ。よく来てくれた!
しかし、お前達もしかしてその格好で車運転して来たのか?」


「ええ、なんか急いでるって聞いたもんで」


《デビル》の名が示す通り、悪魔をモチーフとした全身黒ベースに鎖ジャラジャラのステージ衣裳。顔にはペイントを施し、髪の色は赤、紫、金と銀………そんな四人組が乗り込む車とすれ違った一般のドライバーは、さぞかし驚いたに違いない。


「あと二十分程でステージのセッティングが完了する予定だ。思う存分暴れてくれ!」


「はいっ!精一杯頑張らせていただきます!」


外見のイメージからは程遠い、実に礼儀正しい振舞いのデビル・ハンド。彼等、プライベートでは意外と好青年なのだ。


プログラムの変更に伴い、アーティストの諸事情によりライブの出演順序に若干の変更が行われた事を、スタジオそしてライブ会場にて告知する。


勿論、大俵がライブそっちのけでゴルフに出掛けた事など公表出来る筈も無く、あくまで《アーティストの諸事情による》というのが番組としての公式発表である。


そして、ステージの準備がすっかり完了すると、デビル・ハンドのライブが始まった。



.
< 156 / 201 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop