ヒット・パレード



小鳥がさえずり、まだ人もまばらな公園では、犬の散歩にやって来た早起きな老人が、穏やかな表情で歩いている。そんな、平和な日曜日の早朝6時過ぎ……





「デス!デス!デスデスデスデスデス!デストロイ!」


ヘヴィメタル特有の切り裂くようなハイトーンボイスが、武道館に響き渡る。


デビル・ハンドの一曲目《デストロイ》


これ以上無い位にディストーションをかけたギターサウンドに、二連装のバスドラムを両足で連打。まるで地響きのようなリズムに合わせ、ボーカルの《サタン柴崎》が赤い髪を振り乱してヘッドバンキングを見せる。


「この世の中は地獄!
殺らなけりゃ殺られちまうぜ!
遠慮なんかはいらねえ!
殺られる前に殺っちまえよ!

デス!デス!デスデスデスデスデス!デストロイ!」


真っ赤な舌を出したサタン柴崎の悪魔ペイントされた顔が、家庭のテレビ画面にどアップで映し出される。


ちょうどその時、アンパンマンを観ようとしてテレビリモコンのスイッチを入れた小さな子供が泣き出し、慌ててお母さんがチャンネルを変えた家庭もあったとか無かったとか。


カラー照明により、まるで血の海のように真っ赤に染まったステージで縦横無尽に走り回るサタン柴崎。


一方でギターのデス高橋は、死神の大鎌をデザインしたギターをマーシャルのアンプに思い切り叩きつけている。


ただ、彼等のそんな超過激なステージパフォーマンスは、大俵のファンを含む多くの観客にはいまいち理解に苦しむ内容であったようだ。



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