ヒット・パレード



「いや、それにしても凄い観客の数だな………いったい何人位いるのかね?」


控え室でステージ衣装の青い着物に着替えながら、大俵がマネージャーの木村に尋ねた。


「そうですね、武道館の収容人数はおよそ一万人位ですから、その位は入っているかと」


「ほう、一万人か……」


観客の収容人数に到っては、最近のドーム会場に比べれば武道館はそれほど多くは無い。しかし、コンサートと言えばもっぱら地方の公会堂や体育館が中心である大俵にとっては、一万人はかなりの大人数であった。


その観客の数に思わず顔を綻ばせる大俵。彼単体のコンサートでは、恐らくこれ程の集客力は望めないだろう。武道館満員御礼は、このグループの他のアーティストも含めた24時間ライブというイベントの力によるものが大きい。


「久々の大舞台だな」


会場の観客だけでは無い。テレビの全国中継があるのだ。ここ何年もの間、NHKの紅白の選考にも洩れている大俵にとって、これは彼の存在を世間に知らしめる数少ないチャンスのひとつに違いなかった。


普通、アーティストには専属のヘアメイクが付くものだが、大俵に関しては本人の希望により自分でヘアセットやメイクを行っている。


大俵のそのメイクをする手にも、自然と力が入る。何としてもこのチャンスをものにするのだ。


やがて、控え室のドアがノックされ、スタッフの一人が大俵の出番を告げに来た。


「大俵さん、本番三分前です。ステージまでお願いします!」


「心得た。いくぞ、木村!」


「はい!頑張って下さい先生!」


大俵 平八郎、一世一代の大舞台。
程よい緊張感と興奮を滲ませた面持ちで、一万人の大観衆の待つステージへと向かうのだった。



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