ヒット・パレード



同日午後8時、六本木………


「本田さんから飲みに誘ってくれるなんて光栄です♪どの店にします?私、別に居酒屋とかでも全然構いませんよ~♪なんなら、カラオケボックスでも………」


本田と肩を並べながら、飲みに誘われた事がよっぽど嬉しかったのか、陽子はまるでもう既に酔っているのではと思うようなハイテンションで本田に話し掛けた。


「行く店はもう決めてある。黙って俺について来い」


「ハイ♪どこまでもついて行きます♪」


本田は『少し静かにしてくれ』という意味でそう言ったのだが、どうやら陽子は違う意味に捉えているようである。


15分位歩いただろうか。本田はある一軒のバーの前で立ち止まった。



『ロックBAR・レスポール』



その店の看板を見るなり、陽子は眉間に皺を寄せた。


「ロックBAR?」


「この店だ」


そう言って、本田は木製の店のドアを開けた。


店の中に足を一歩踏み入れて、本田が後ろを振り返ると、陽子はどういう訳か仏頂面をして店の前に突っ立っている。


「どうした陽子、中に入るぞ?」


「は、はい………」


開けられた入口から見える店の中では、威勢のいい80年代のロックンロールが耳を塞ぎたくなるような大音量でガンガン鳴り響いていて、モヒカンや赤い髪の男達がバーボン片手に踊っているのが確認出来る。


少し前まで陽子が夢見ていた、二人ワインを手にしての本田との甘い語らいは、この店ではとても叶いそうには無かった。



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