戦乙女と紅(ヴァルキリーとくれない)

右腕が、痺れる。

このような小柄な、しかも二十歳にも満たない娘のどこに、これ程の力が備わっていたというのか。

無理をしたとしても、俺の右腕はしばらく思うように動かなかっただろう。

動いたところで、どうしても反応は遅れる。

その僅かな遅れが、戦闘では命取りになる。

自然、反撃に繰り出そうとしていた左の剣は、受けに使うしかなくなる。

そこへ。

「けぇえぇえいっ!!」

怒号にも似た声と共に、乙女の振り下ろしの一撃が襲い掛かる!!

迷っている暇はなかった。

左の剣を横に構えて受けつつ、後方へと退く!!

ズシンッ!!と。

頭上に岩が降ってきたような感覚。

その力感に、地面の砂が埃を舞い上げた。

…俺は辛うじて乙女の斬撃を受け流し、乙女から距離をとっていた。

…確かに、相手は馬上という有利があった。

だが俺とて、その程度の差で小娘ごときに遅れを取るような事はないと思っていたし、事実その自信もあった。

しかし、認めねばなるまい。

…戦乙女。

この娘の実力は本物だ。

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