戦乙女と紅(ヴァルキリーとくれない)

丘の上から、小国の様子を眺める。

…思えば乙女との邂逅も、この丘からの風景から始まったな…。

そんな事を思っていると。

「紅様!」

小国に偵察に行かせていた兵が戻ってきた。

「戦乙女の軍、間もなく小国から出陣してきます」

「やはりか…」

フン、と鼻で笑う。

乙女、やはりお前に投降という選択肢はなかったか。

ここで白旗をあげれば、少なくとも民衆や兵の命は助かったやも知れぬ。

だというのに最後まで戦うという事は…。

騎士の誇りや矜持にすがるというのか。

つくづく俺とは相容れぬ存在なのだな、お前は。

「如何されますか、紅様」

次の指示を待つ精鋭部隊の兵士達。

「…そうだな…」

俺はしばらく腕を組んで考える。

乙女の軍が大国軍十一万の軍勢と衝突し、消耗するまではしばらくの時間がかかるだろう。

それまで黙って見ているというのもつまらない。

「こちらも準備を始めるとするか」

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