借金


彼氏に車を貸した日から2ヶ月ほど経過した頃の事だった。

自宅に私宛の電話があったと母親から言われたが、まったく聞き覚えのない名前だったので気にしていなかったが、その数日後、今度は美容室の電話に私宛の電話があった。

丁度、昼ごはんを近くのコンビニまで買いに出かけていたので、アシスタントから伝言を聞いたが、それも、まったく聞き覚えのない名前だった。

そして、その数日後、また店に私宛の電話がかかって来た。

「はい、お電話代わりました」

私が電話口に出ると、聞き覚えのない名前を名乗る男の声だった。
そして、その電話口の男が、思いもよらない事を言う。

「実は2ヶ月ほど前に、あなたの名義で、うちから借金を申し込まれていて、その返済が今月、確認できないんですよ。初めの1回は入金の確認が取れてるんですけどねぇ」

私は、何の話かも、解らず、思わず周囲を見渡す。
幸いにも閉店間際の電話だったのでアシスタントもスタッフも店の掃除をしながらスタッフルームで雑談をしていた。

私は小声で、その男と話をする。

「お金を借りた覚えはありませんが」

そう言うと、その男は

「いえ、間違いなく、あなたの名義で、うちからお金を借りてますよ。確か、お車はトヨタの○○○ですよね?それを担保にされて、あなた、うちから借りたじゃないですか。借用書も全てありますよ?コピーして送りましょうか?」

「いえ、確かに、私は、その車種に乗っていますが、お金を借りた記憶はありませんよ
?」

「そう言われても・・実際に、今ここに借用書ありますよ?送りましょうか?そちらの住所も全て控えていますので、お勤め先がいいですか?ご実家が宜しいですか?」

私は、心臓がドキドキした。

即座に頭の中に、彼氏に車を貸した日の事を思い出した。

丁度2ヶ月ほど前だった。

一応、借用書のコピーは店に郵送してもらうと言う約束をし、一旦、電話を切り、すぐに携帯電話から彼氏に電話をかけた。

彼氏とは昨日、電話で話しをしていた。


でも、携帯電話からは延々と「現在お掛けになった番号は、只今使われておりません」と、ガイダンスが流れるだけだった。
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