風俗店では、週に1度の仕事が休みの日にオープンからラストで働くことにした。

1日頑張れば、10万円稼げる場合もあると言われたからだ。

風俗デビューの日。店に行くと、まずポラで写真を撮られた。
お客に見せるための写真だと言った。

新人の場合は優先的にお客さんをつけてくれるので、初めは黙っていても、客はつく。ただし、1ヵ月後からは、そのお客さんを自分の指名として返す努力をしないと、新人保障期間は切れてしまうから、頑張ってね・・と店員に言われた。

指名を取る努力か。ここも、そういう努力が必要なんだと思った。

シングルのベッドマットが1枚と、その隙間30cmくらいの狭い部屋に案内されて、そこで待機するように言われた。

コールの場所、コールの使い方、客の体を洗うボディソープ、うがいをするイソジン、消毒効果のある石鹸グリンス、ティッシュ、コンドーム、タオル、客に出す飲み物、タイマーの使い方、ベッドのセットの仕方・・・一通り説明を受けた。

「じゃあ、お客さんがついたらコールしますね!」と言って店員は部屋から出て行った。

テレビもラジカセもない狭い部屋で、何もする事がなくポツンと待たされる。

部屋の中を、色々と眺めていたら、女の子が読む少女マンガの本が数冊置いてあった。

この部屋を使った誰かの忘れ物だろうか?

私は暇しのぎに、その本をペラペラとめくった。

店のBGMが、ラブバラード系の洋楽で、丁度、知ってる歌が流れたので、少し、ほっとしたような気がした。

時計を見ると、この場所に来てから40分くらい経過していて、思わず、「私はなんで、ここにいるんだろう?」と、思ってしまう。

昨日のこの時間は、美容室で常連さんのパーマのロッドを巻きながら、朝からやってたワイドショーの話なんかしたりしてたな・・・・。

その後、新規のお客さんが来て、カットして、また来ますって言って、その新規のお客さんが帰ったな。あの新規のお客さん、すごい、イイ人だったなー・・・

そんな事を呆然と思い出していたら、突然コール音が鳴った。

心臓の音が、凄い・・・・動悸のように・・・・

「リナちゃん、お客様です!60分、写真指名です!頑張ってね!」

私は、ここの店では「リナ」と言う名前らしい。
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