紫陽花と君の笑顔



 ――本当に、死んだんだ……。




 脳裏に、あの笑顔で誰にでも優しい、時折ふて腐れたりなんかもした、可愛い彼女の姿が浮かぶ。


 俺と付き合うようになって、ますます綺麗になった舞桜。


 彼女のあの笑顔は、もう見れないのか……?





 「舞桜……」





 ポツリと呟いた声は、誰に届くことも無く空間の中に溶けていく。





 ――玲くん、大好きだよ。





 気がつくといつも一緒だった舞桜。


 そんな彼女が俺の隣から居なくなってしまった。


 そのせいで、俺の左側にあった筈の温もりは、行き先を失った。





 舞桜……どうして、先に逝ってしまったんだ……。





 一緒に闘うって、約束したじゃないか。


 俺と一緒におじいちゃんとおばあちゃんになって、一緒に死のうって、約束したじゃないか。



 約束した、ばっかりじゃないか……。




 あの時の、硬い決心に満ちた瞳は、嘘だったのか?


 約束は、上面だけのおままごとに過ぎなかったのか……?


 なぁ、神様。聞こえてるんだろう?


 舞桜を、返してくれよ……。


 俺のたった一人の大切な人を奪わないでくれ……。


 その思いは虚しく、無情にも白い虚無の空間に吸い込まれていった――


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