僕らが大人になる理由

「でももう、どうしようもない…」


…許されないことが増えるのが、大人になることだと、


責任をとることが、大人になることだと、


ただひたすらに拘束してきた。自分を。


そういう風に、生きてきた。



心を殺して、ロボットみたいに。



「紺ちゃん…じゃあ最後にこれだけは聞かせて…真冬のことは、好き…?」

「………」

「その気持ちも、殺すの?」



…頭の中で再生されるのは、

真冬の、いろんな表情。



『作ってるとき、楽しそうですよね。子どもみたいに無邪気で』

『紺君のバカ』

『紺君が言ったことは、まるで、あたしが、全てが、どうでもいいって言ってるみたいで…っ』

『あたし、名前を呼んでもらえることが、こんなに嬉しいことだなんて思わなかったです』

『ここが好きだから、みんなが好きだから、あたしも皆に好きになってもらえるような、そんな人間にここでなりたいっ…』

『紺君…告白の返事、今もらってもいいですか?』




―――『…はい、分かりました、紺君』




「殺せるもんなら…」



この気持ちを、殺せるもんなら、殺したい。

どうにかなってしまいそうなほど、苦しいから。







どうにかなってしまいそうなほど、愛しいから。





< 142 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop