僕らが大人になる理由


最初は無表情に見えたあなたの顔も、今は大分見分けられるようになった。

あなたは今、とても優しく微笑んだ。


あたしは、紺君に手を振って、前へ進んだ。

…社会人2年目。毎日凹んでばかり。でも、進まなければならない。

何のために?

それは、2年前のクリスマスで、とっくに答えが出た。

彼の手を握った瞬間、答えが出た。



―――少しずつ、少しずつ、

許されないことが増えていくのが怖くて、

子どもに戻りたいと思った日もあった。


悔しくて、悔しくて、

そんな風に思う日が多くなって、

はやく大人になりたいと思った日もあった。



…風向きは、変わっていく。

追い風の日も、向かい風の日も、それでも前へ進まなくてはならない。

きっと立ち止まったり、後ろを振り返ったりしてしまう日もあるだろう。


そんな時、自分の手を握ってくれる人が、きっといる。


…あたしはあの時、思ったんだ。

紺君の手を握ったとき、思ったんだ。

この人を幸せにしたいとか、この人を守りたいとか、そんな感情を超えて。



この人と一緒に、歩んでいきたいと。

成長したいと。


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