僕らが大人になる理由
「…あ、クリスマス、何かしたいことありますか? 営業後になっちゃうから、かなり深夜にはなりますが…」

「あ! あたしもう一回九州のあのイルミネーション見たい!」

「なんて無茶を……」

「嘘ですごめんなさい美味しいもの食べれればどこでもいいです」

「…九州はさすがに無理だけど、どこかイルミネーション探しておきます」


あたしが言ったどんなに無茶なことも、真面目に向き合ってくれる紺君。

あたしは、そんな紺君を見るたびになんだか胸がくすぐったくなる。

…この人を大切にしなきゃって、思う。


…2年前の、あのクリスマスの日。

世界がとても、輝いて見えた。

紺君と手をつないだ瞬間、今までの不安が嘘みたいに吹き飛んだ。



この人と一緒なら大丈夫。

心の底からそう思えた。



―――こんなちっぽけな手で、一体誰が守れるだろう。

自分のことすら守れていないのに、一体誰が守れるというのだろう。


そんな風に、自信を無くした日もあった。

あれから2年が過ぎた。成人した。21歳になった。社会人2年目になった。

人の中身の成長は、目に見えないし、自分で評価するものじゃないから、分からない。

でも、仕事でミスして自分に自信が無くなっても、何度凹んでも、あの日の悔しさを思い出して、すぐに立ち直れるようになった。


相当悔しかったんだ。

大人になることが、あんなに怖かったことが。

自分を守ることが、あんなに下手くそだったことが。


あんな意気地なしには、2度と戻りたくない。

そう思えるように、なった。


「紺君、行ってきます」

「うん」
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