僕らが大人になる理由

そう言えばあの人、ちゃんと朝食食べてるのかな。

なんか、料理できなさそうなんだよな。仕込みとかまかせられるのかな。なんか不安…。

それより、昨日の告白はどうしたらいいんだろう。

勝手に盛り上がって勝手に電話切られちゃったし、流していいのかな。でもそれって、どうなんだろう。


「紺、火ぃ強すぎ、火!」

「っ」

「どうしたー? 具合悪いか?」

「っ、すみません、違います。大丈夫です」


しまった。

さっき、集中しようって思ったばっかりなのに。

店長に心配かけて何してんだ。俺。

それから上がりまで、俺は無心で料理を作り続けた。





「柊人君!」


19時30分。

店から駅までは徒歩10分くらい。

俺は、バイト服から私服に着替えて、予定より少し遅く駅に着いた。

由梨絵とは駅の中にあるカフェで待ち合わせをしていた。

俺を見つけた彼女は、嬉しそうに微笑んで、右手を挙げた。


「バイトお疲れ様っ。何飲む?」

「あー、ウィンナーコーヒー。と何か食べたいです…由梨絵はお腹空いてませんか?」

「んーちょっと空いたかも。あ、このアボカドのディップ、美味しかったよ。この前食べた」

「じゃあ、それ二人で食べようか」


俺は、店員に声をかけ、由梨絵が美味しいといったものを注文した。

先にコーヒーが届き、暫くして料理が運ばれてきた。

それを二人とも一口食べて、『美味しいね』と由梨絵が笑った。


「そういえば、柊人君、今月休みどのくらいあるの? 家来てよ。パパもママも会いたがってるよ」

「休み…は、正直微妙かもしれません。店長にバイトの面接とか色々押し付けられてしまって…」

「ええー」

「うん。でも、由梨絵の誕生日は絶対に空けますから。その時行きます」

「…そっか! ねぇ、どうせなら泊まってってよ」

「考えときます」

「煮え切らないなあー」


と言って、由梨絵が、コーヒーカップに添えていた俺の手の甲をさすった。
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