僕らが大人になる理由


紺君はどうして、こんなに優しいのかな。

どうしてこんなに弱い人間の気持ちを、分かってくれるのかな。

あたしも、いつか恩返しをしたい。

こんなにやさしい気持ちを分けてくれた紺君に、はやく恩返しがしたい。

だからあたし、もっと頑張ろう。

もっと成長して、仕込みもできるように今日から料理の練習も始めよう、女子大生の先輩の嫌味にも折れないくらい強くなろう。


誰かが弱ってるときに助けてあげられるように、強く優しくなろう。


そんな大人に、なろう。



「じゃあ、そろそろ戻りましょう。光流が泥酔してるはずです」

「あ、それより紺君、彼女さんの誕生日は…」

「…本当は泊まる予定でしたが、光流と真冬が心配なんで、帰ってきました」

「えっ、まさかあたしと光流君、紺君の中で同じフォルダに仕分けられてるんですか!?」

「……そこしかないでしょう」

「ええええ絶対嫌です! あんなチャラいのと仲間なんて! 彼女フォルダに仕分けて下さいいいい」

「ほら、そうやって無茶言う所が光流と一緒なんですよ」

「がーん!」


…大人になることは、きっと思ったより怖いことじゃないかもしれない。

こうなりたいっていう目標に、真っ直ぐ進んでいれば、いつの間にか辿り着いているのかもしれない。





誰かが弱ってるときに、助けてあげられるように。

誰かが弱ってるときに、守ってあげられるように。



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